病院広報誌 WA! 第98号 2024.04.09 | 広報誌WA!

「優しい医療・楽しい職場」~地域の皆さまと共に~ 共和病院 副院長 松下 直美

春爛漫な気候の中、今日もまた、当院の駐車場を大府市の循環バスが通っていきます。玄関前で乗降する方々を見る度に、胸が熱くなります。30年以上前にこの病院に就職した時には想像できない光景でした。単にバスが停留し利便性が高まったことが嬉しいだけでなく、循環バスの存在は、当院が地域の中の一部であることを象徴している気持ちになるのです。

30年前、私が当院に勤め始めることを伝えた際、以前から大府に住んでいる方からは「えっ、精神科病院でしょ」と意外な表情をされました。また、ある日病院前で転倒事故にあった学生さんを、職員が病院待合にお連れしたことがありました。その際に、お迎えに来られた親御さんが「早く帰ろう、こんなところにいると頭がおかしくなっちゃうぞ」と言われ、応対した職員が傷ついている場面も目にしました。理解が得られていると感じている職能団体ですら、ややもすると、「精神科だけ特殊」という意見が出ることもありました。精神科の患者さんへの偏見に加え、そこに勤める職員も偏見に曝されている気持ちになったこともありました。

時は流れ、当法人では「優しい医療・楽しい職場」の理念のもと、患者さんに優しい医療とは何か?と改革が始まりました。楽しい職場づくりには、ひとりひとりがどのように働くべきかを考え自然に助け合って行動している姿も良く見ます。社会の理解も進み、専門職は地域でも健康講座に関与させていただく機会もたくさんいただいております。地域のボランティアにも積極的に参加し、皆さまから頼りにしていただく機会も増えました。公民館祭りでは、テント張りや片付けや出店の手伝いもさせていただき仲間に入れていただいています。デイケア患者さんは地域のごみ拾いを行い、美化に貢献しています。私自身も地域活動では、共和病院の職員ですと名乗るようにしてきました。赤い鼻をつけてクラウンチョクになる時も、共和病院の副院長と紹介を受けることも多くあります。

インクルーシブ社会は瞬間的に形成されるものではなく、ひとつひとつの関係性の構築で波及されていくものと考えます。昨年度はコロナ規制が緩和されたこともあり、ボランティアさんが日常的に来てくださりました。盆踊りや、てんてん祭りも再開され、患者さんと共に楽しんでおられる姿を見て、応援してくださっている地域の方には感謝でいっぱいです。

今年度も地域の皆さまに信頼される医療機関であるように、理念である「優しい医療・楽しい職場」を追求し続けていきたいと思います。そして、専門職として、地域での貢献や発信をし続けて、この地域の包括的な社会形成に寄与できればと思っております。

地域の皆様には引き続きご指導をいただきながら、当院に足を運んでいただければ幸いです。

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